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ムカッとする前にFC2 Blog Ranking
すっかり夜も更けていた。今日も残業の帰り。時計を見ると時間はすでに11時を過ぎていた。もっともどうせ帰ったって何もすることのない僕だ。暇をもてあましている時間を有効利用してお金を稼ぐ。なんて建設的なことなんだろう。 「今日もコンビニ弁当・・・か。」 一人暮らしも2年を過ぎればすっかりなれたものだ。最初は張り切って自炊をしていたが、仕事が不規則な上に忙しく、なかなか帰ってからご飯を作る気にはなれなかった。当然、 「おかえり!ご飯作って待ってたよ!」 なんてかわいい女の子がお出迎えなんてサプライズもない。そう、残業の日はコンビニ弁当。定時に帰ってもコンビニ弁当。もうコンビニ弁当なしではいられない。 「いらっしゃいませ。」 深夜のコンビニのドアをくぐると、不意に女性の声がした。おかしいな。いつもなら若い男のバイトがぶっきらぼうに立っているだけなのに。 ちらりとレジに目を向けると、そこにはかわいい女性が立っていた。年は20歳くらいだろうか。ぱっちりとして目が特徴的ないわゆるカワイイ子だ。 (深夜のバイトに女の子?珍しいな・・・) 珍しさは感じたものの、僕は弁当を買いに来たのだ。だがレジの前を通過するのは恥ずかしかったので、本を見るふりをしながらアイス、ジュース経由で弁当コーナーへと向かうことにした。 何も恥ずべきことはない。僕は残業をしたので夜遅くなり、仕方なくコンビニの弁当を買いに来たのだ。深夜に誰ともご飯を食べる相手もいなくて泣く泣くコンビニに来たやつらとは違う。そう、僕には深夜に一人でコンビニ弁当を買う正当な理由がある。 深夜にコンビニ弁当を買うことに自分なりに理由付けできた僕はなんだか気が楽になり、またレジの女性を見てみた。かわいい。よく見れば僕の人生の中で20位以内にはランクインするんじゃないかというほどかわいい。会社からコンビニ経由で家へ直行している僕の生活リズムではなかなか出会えないほどの女性だ。 そう思うと次はあることが気になった。関係ないが僕は声フェチである。どんなに美人でも酒焼けのようなガラガラ声では魅力を感じない。しかし見た目はブタさんのようでも超かわいい声だと魅力を感じる。とどのつまり、顔より声のほうが大事なんじゃないかというレベルのほどの声フェチである。 声が聞きたい・・・。いや、正確には1度聞いていたね。いらっしゃいませ、と。しかし、深夜のコンビニでまさか美人が立っていると思うだろうか?同じく声フェチの同士であっても、コンビニに入るたびに店員の声に集中しているか?先ほどのいらっしゃいませは完全に油断していた。 しかし、いらっしゃいませチャンスは一度だけ。その声を聞くために、出て店に入る、アウトリバースイン(?)なんてできやしない。さてどうする? しかもどうせ声を聞くなら、いらっしゃいませ程度では満足しない。どんな言葉が聞きたいだろう。またその言葉を導き出す方程式は何だろう。僕は弁当を選ぶふりをしながら考えてみた。 「いらっしゃいませ、ご主人様」 悪くない。だが、僕の平凡な頭ではご主人様というワードをこの状況で導き出す方程式は解けなかった。残念。 「抱いて・・・。」 ある意味究極だ。この言葉だけで僕は弁当を買う必要もないくらいおなかいっぱいである。ただ、コンビニの客とレジの女性。向かい合うのは会計のほんの一瞬。まさに刹那。そこで「抱いて」はないだろう。 「好き・・・。」 こんな女性に好きなんて言われたらどうだろう。一生ありえないシチュエーションだ。悲しいかな。 と、ここで名探偵コ○ンばりに頭に閃光が走った。 「そ・・そうか!あの方法を使えば・・!」 僕の戦いが始まった。 ![]() |
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夕方の海はとても綺麗だ。だが、どことなく寂しい気持ちにもなる。それは今日という日が終わりを告げる、つまり彼女との初めてのデートが終わりを告げることに意味するからだ。 「綺麗だね・・・。」 僕がそうつぶやくと彼女は小さくうなずいた。きっと僕がこの夕焼けの海のことを綺麗だと言ったと思ったからであろう。本当は夕日に染まる君の顔が綺麗だと言ったんだよ。でも勇気のない僕はそんなことも伝えられず、 「そろそろ帰ろっか・・。」 と、笑顔で彼女に伝えた。本当に俺は勇気がない。「綺麗だね」すら言えない僕が、今日伝えたかった本当のことを言えるはずもなかった。あれほど今日言おうと思って来ていたはずなのに。だが、無常にも太陽は沈んでいく。そして僕たちのデートも終わりを告げるのだ。 (帰ろう・・。) 自分のふがいなさにいたたまれなくなった僕は、そばに止めてあった車へ歩き出そうと彼女に背を向けた。 「もうすぐ日が沈んじゃうよ・・。」 不意に背中越しに彼女の声が聞こえたので、慌てて振り返った。 「そ、そうだね。早く帰らないとね。」 「デート、終わっちゃうよ・・?」 「今日は楽しかったよ。ありがとう。」 そういうと彼女は一瞬寂しげな表情をした。だが、すぐにいつもの明るい笑顔になり、 「わたしも楽しかったよ!」 と言って、車のほうへ歩き出した。すっかり辺りは暗くなっていた。こうして僕のデートは終わりを告げることになった。 車に到着し、鍵をあけると彼女はこうつぶやいた。 「意気地なし・・。」 そして車に乗り込んだ。全てを見透かされていたようでとても恥ずかしくなった。僕も急いでドアを開け、シートにすわった。 「あ、あの・・。」 「早く帰りましょ。」 「いや、その・・。」 「それとも延長するのかしら?」 「えっ?」 「約束では本日、日が落ちるまでという契約になってますよね?まだデートを続けるなら延長ということでいいのかしら?」 「いや、延長するほどお金が・・・。」 「じゃあ早く送ってちょうだい。次のお客さんもいるんだから。」 そういうと彼女はタバコに火をつけた。 「それにしても変ったお客さんよね。ただ海辺でデートだけなんて。しかも日が落ちる前に帰ろうとするし。逆にわたしが気を使っちゃったわよ。まだ時間的にはいいですよって(笑)」 「・・・。」 「清純派気取ってただの海へドライブのつもりだったの?ほんとうはいつ手を出そうか狙ってたんじゃないの?ま、うちのお店はそういうことが商売なんだけど・・。ただの意気地なしね。」 「・・・。」 「おかげでわたしは楽にお仕事ができました。ありがとうね。」 こうして僕と彼女との契約デートは終了した。いったいほんとうにデートをする日はいつになるのだろう。 ![]() |
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